ユーザーレポート

USER REPORT

シモハナ物流株式会社 様

シモハナ物流 (下花実社長、広島県安芸郡坂町)は2011年3月から、自社車両に矢崎のドライブレコーダー「YAZAC-eye3」の装着を開始し、2012年4月末で、保有車775両のうちコンビニエンスストアの配送車両を除く527両への取り付けが終了した。『事故防止』『事故発生時の過失割合を巡るドライバーの保護』が狙いだったが、早くも効果が現れている。

加害事故、17%減少

まず端的なのは、加害事故件数の大幅な減少だ。2010年度(2010年4月~2011年3月)と比べ、2011年(2011年4月~2012年3月)は17%も減少した。11年度は装着を本格的に進めた時期と重なり、ドライブレコーダーが加害事故減少に大きく貢献していることが分かる。2012年度もドライブレコーダーのメリットを最大限に生かしながら事故ゼロを目指している。

また、ドライブレコーダーの大きなメリットは、事故発生時に悪者にされがちなトラックドライバーを客観的な記録映像によって救済することだ。シモハナ物流でもドライバー保護を目的に掲げたが、これを体現する典型的な事故が広島市内で起こった。

交差点で同社のドライバーが矢印信号に従って右折していたところ、対向車線からバイクが直進してきた。幸い衝突は回避できたが、バイクはトラックの手前で横転し、運転者はけがを負った。警察の事情聴取に対し、バイク運転者は最初「前方の信号は緑だった」と主張して譲らなかった。しかし、ドライブレコーダーの映像を確認したところ、信号は既に矢印が出ている状態だった。しかも、ドライバーは適切な行動をしていたことがしっかりと映像に残っていた。シモハナ物流は早速この映像を警察からの依頼で警察に見せ、正当な過失割合を導き出すことに成功した。

▲YAZAC-eye3本体取付例

ハザードマップで可視化

実際の衝突はなく、ヒヤリ・ハットに近いとも言えるこの事故。衝撃があった前後の映像を記録する従来のドライブレコーダーならお手上げだった。しかし、「YAZAC-eye3」には衝撃前後だけでなく、常時録画して検索できる機能があり、ドライバーを救うことができた。
「なぜ矢崎のドライブレコーダーを選んだかと言えば、その理由の一つが常時録画の機能。交差点事故では早速その効果が出た」と四反田義和専務は満足げだ。

「YAZAC-eye3」にはGPS(全地球測位システム)機能が搭載されているため、こうしたヒヤリ・ハットは日時を入力すれば容易に検索できる。また、発生場所はハザードマップにプロッティングされ、一目で危険箇所が分かる。ドライバーはヒヤリ・ハットがあった日時を記憶しておき、運行管理者に告げ、運行管理者は検索して必要事項を書き込んで保存するが、ドライバーがワンタッチで記録しておける機能もある。また、ヒヤリ・ハットが頻発する場所にトラックが近づいたらアナウンスで注意を促すことも可能だ。

シモハナ物流では現在、事故時の映像を本社で集約してドライバー教育に活用しているが、今後はヒヤリ・ハットの映像も全国の拠点から吸い上げ、安全教育のデータとして蓄積していく考えだ。

ドライバーを保護

▲赤外線カメラ取付例

こうした機能以外にも、「YAZAC-eye3」のスペック(性能)は豊富だ。常時録画機能と並んで矢崎のドライブレコーダーを選んだもう一つの理由として、四反田専務は「1両のトラックにカメラを5台まで搭載できる」点を挙げている。

前方1台、左右の後ろ向き2台に加えて、運転席のドライバーを撮影するカメラも付けているのが同社の特徴。居眠りや携帯電話を使いながらの運転を抑止するのが狙いだが、事故の時にドライバーが脇見運転をしていないことを証明するツールにもなると期待している。

総務部の吉田忍氏は「最初はプライバシーが侵されることを心配するドライバーもいたが、事故の時に保護できる利点を説明して理解してもらうことができた。最近はドライバーの方から後方を撮影するカメラを付けて欲しいとの要望が出ており、検討中」と説明する。

運転席を写すのは赤外線カメラで、夜間でもドライバーの動きがはっきりと見える。その他は通常のカメラだが、「映像が奇麗で見やすいのは助かる」という。

充実した機能に加え、矢崎では、シモハナ物流と保守契約しており、全車について全面的なサポートをしていく構えだ

テレビ会議と連動

シモハナ物流では昨年9月から、テレビ会議システムを導入した。これまで全国の拠点の責任者を本社に集める安全衛生会議を各地区ごとで毎月1回、全体は年4回開催してきたが、これを毎月テレビ会議にして全体参加に変更し、大幅な業務効率化や経費の削減を実現している。

大規模な拠点には50インチや30インチの大型ディスプレーを設置し、画面に映った相互の顔を見ながら話し合うが、ここで威力を発揮するのがドライブレコーダーの臨場感ある映像だ。「ペーパーに比べてイメージがリアルに伝わり、みんなが納得して事故原因や対策について意見交換し、共通認識を持つことが出来る」と四反田専務。

ドライバーに対しては拠点ごとのミーティングでドライブレコーダー映像を見せるが、吉田氏も「事故の時に気付かなかった自分の行動を客観的に見ることができ、反省点を確認することができているようだ」と話す。

前述のように、現状では事故映像が中心だが、今後はヒヤリ・ハット映像を蓄積することでテレビ会議やミーティングとの相乗効果を高め、安全対策のレベルを上げていく方針だ。

デジタルタコグラフとの相乗効果

ドライブレコーダーの活用で運送会社がこれから意識していかなければならないのは、デジタルタコグラフとの連携だ。デジタルタコグラフで高得点のドライバーのドライブレコーダー映像をチェックして見ると必ずしも「良いドライバー」とは限らない。

例えば、交差点で信号が黄色から赤に変わる間際に右折して走るトラックがある。ドライブレコーダーの映像で見れば危険だが、デジタルタコグラフでは急停止をしないので評価される。

既に全車にデジタルタコグラフを導入しているシモハナ物流では、矢崎のアドバイスを受けながら、こうした点にも目を向け、ドライバー教育に生かしていく。

今回の投資額は2億円弱で、各拠点が所属するトラック協会の助成制度を使った。安くはないが、「1~2年程度の短期ではなく、長期的に見ればドライバーの意識改革など、金銭に換算できない効果が必ず出る」とみている。

四反田専務は「ドライブレコーダーで優しい運転を心掛ければ、これがエコドライブとなり、環境対策にもつながる。マナーをさらに向上させることで、当社の看板車をもっとPRしていきたい」と話している。

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